鮭のThink and Feel !!

主に映画や小説など創作物を中心に感想を綴ります

毎日映画チャレンジ3日目『メメント』

三日坊主の三日目までは続いた本企画。

今日鑑賞した映画はクリストファー・ノーラン監督作『メメント』。

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強盗犯に襲われて妻を失い、頭部を損傷し、約10分間しか記憶を保てない前向性健忘という記憶障害になったレナード。彼は、ポラロイド写真にメモを書き、体中にタトゥーを彫って記憶を繋ぎ止めながら、犯人を追う。実在するこの障害を持つ男を主人公に、時間を遡りながら出来事を描くという大胆な構成が話題を呼び、全米でインディペンデントでは異例のヒットを記録。監督は本作が第2作の新鋭、クリストファー・ノーラン。(映画.comより引用)

eiga.com

 

本作は短期間で記憶を失う主人公を語り手に、時系列を遡る形で物語が進む特殊な映画である。

昨年、同監督が制作した『TENET』は映像技術で世界そのものを逆回しにする作品だったが、本作はそのプロトタイプとも言えるだろう。

 

そして改めて感じるのはクリストファー・ノーランの恐るべき情報整理力である。

これが最大限に発揮されたのは『ダンケルク』であると私は考えているが、要するに変則的な時系列の組み合わせとその場合に起きる状況の整理がとんでもなく上手い監督なのである。

 

 

ダンケルク』では一週間、一日、一時間という異なる時系列の視点を同一時間軸のラストシーンへ収束させるというトリプルアクセルを成功させたノーランだが、本作『メメント』にもその原型が見て取れる。

一つの場面が終わるとまた次の場面が始まり、その終わりは先程の場面の始まりへ収束する。

書いていると訳がわからなくなってくるが、ノーランが得意とするのは要するに映像ならではの時系列叙述トリックである。

唐突に挿入されるシーンが後から繋がってくる、『TENET』で言うところのキャットの急な回想シーンである。

意図的に観客の意識をシャッフルして混乱させ、その答えを知りたい観客は目の前の映像にのめり込んでいく。

意味不明ではなく、意味ありげな混乱こそがノーラン映画の特徴なのだろう。

だからこそ意味を求めて映画へのめり込み、その答えが与えられた時のカタルシスは筆舌に尽くし難いものがある。

とはいえ『わかりにくさ』と『わからなさ』の境界が曖昧なのもノーラン映画の特徴だ。

特に『TENET』ではわかりにくさにプラスして物理法則を故意に歪めてしまったりしているので余計に混乱を招いている。

その辺はご愛嬌といったところだが少なくとも感覚的な映画を好みつつ、複雑な考察も好きなオタクとしては彼の作る映画は非常に好みである。

そんなノーラン作品の原型である『メメント』も個人的にとても好みの作品だった。

今日は眠いのでここまでにしよう。